読者のみなさん、今年の夏は何をして過ごしましたか。
相変わらず暑かったですね〜。暑さに負けず楽しい夏の思い出はできましたでしょうか。
今回の記事は、わたし佐々木瞳と小幡宣友(のぶさん)で担当させていただきます。わたしの夏の一番の思い出は、この記事で書かせていただく大木研究会の活動でした。暑い夏だからこそ、参加したみんなで防災への熱いっ!気持ちをぶつけられた時間だったんじゃないかと思っています。そんな思い出深いイベントとなりました、8月3日山形県鶴岡市にて行われた小学生向け防災ワークショップ〜君が防災リーダーだ!〜についてお伝えします。
この企画は、慶応義塾大学湘南藤沢キャンパスの2つの研究室による初の合同プロジェクトとして行われました。大木聖子研究室と、さまざまな視点からヘルスケアを研究されている秋山美紀研究室の二つです。初の合同プロジェクトとして、初めはお互いの研究領域の違いから戸惑う場面もありましたが、徐々に打ち解けていき、お互いの研究の知見を活かしながら企画を練っていくことができました。大木研究会としても、秋山研究会の知見をいただきながら新しい防災コンテンツを作成することができました。詳しくはのぶさんに説明をしていただきます。
本番では、劇、クイズ、ダンス、などなど。様々な内容で楽しく防災を学んでもらえるように工夫を凝らして考えました。一つのコーナーごとに防災カード、終わりには防災リーダーの証明書をプレゼントをしました。子供達の反応はというと……嬉しいことに、前のめりな姿勢で飽きずに楽しみながら参加してくれました!
今学期の春から大木研究会に所属した私ですが、この鶴岡での経験は一生の宝物になったと思っています。ここでみた防災は、いっさい脅しではない、こども達の「熱中する気持ち」を引き出す楽しむ防災だったからです。こども達にとっての学びであり、私達にとっても大きな学びとなりました。
そして、山形の美しい景色やおいしい食事、心あたたかく迎えてくださった皆様に感謝いたします。また、今回のプロジェクトでお世話になったすべての皆様、貴重な経験をありがとうございました。
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以下は小幡宣友から、このプロジェクトから生まれた新防災コンテンツの詳しい内容を説明させていただきます。
今回のワークショップは、大木研の防災授業コンテンツである「写真で危険探し授業(以下、写真授業)」に公衆衛生学の分野で発展した「Photovoice法」を応用したものを用い、子供たちに生じる変化についての検証を併せて行いました。
☆Photovoice法について
ワークショップの参加者が各自で撮影した写真をもとに話し合いをおこない、自分自身や地震が所属するコミュニティに潜む問題の発見・解決を目指すものです。大木研究会の写真授業で用いる写真は、先生方や行政の方々にお願いして撮影していただいていたので、子供たちはあくまで被写体でしたが、Photovoice法を応用した写真授業では子供たちが撮影者になります。今回のWSでは被写体から撮影者への変容が、災害の自分のこと化に対してどのような影響力があるかについて調べました。
☆Photovoice法を応用した写真授業の流れ
事前にお気に入りの場所を撮影する。
お気に入りの場所についてグループで共有。
危険を判断する視点を学び、どのような危険が潜んでいるかを考える。
同じ場所を再度撮影する。
☆検証の結果
事前に撮影された写真とWS(ワークショップ)後に撮影された写真を比較したところ、WS後に撮影された写真は、危険な要因が明確に写るように構図が変えられていました。これは、WSを通して危険を判断する視点を獲得し、WS後にその視点を活用して自ら危険を判断することができるようになったことを示しています。
また、提出された写真に添えられた感想から、WSでは「学ぶ者」であった子供たちが、防災を周りに広める「伝える者」に変容していることが分かりました。この変容の理由として、”楽しい防災”を目指したWSの設計が子供たちに周囲に自慢したくなるような経験をする機会になったことが一因であると考えています。今回のWSの事例は、”楽しい防災”の有効性を再度示しているほか、理科の延長で扱われがちな防災を国語(伝え合う力の育成)や社会(防災マップ作り)といった他教科への応用可能性を示唆しています。
なお、今回の研究成果は各種学会で発表したほか、ORFの秋山研究会ブースで発表しました。以下のポスターはORFのものになります。より詳細にWSについて知っていただけるので、ぜひご一読ください。