9/16は、長野県の市立真島小学校にお邪魔しました。
真島小学校は、長野出身の飯沼・田上・山崎(3人とも昨年度卒業)からなる「真島チーム」を中心に、長く学校の防災教育に携わってきた学校です。
今回はその縁で、小学校の授業参観日に行われる全学年の防災授業を見学させてもらうと共に、保護者の方々に対して大木先生が水害に対する防災の講演を行いました。
さらにさらに、真島小の保護者の方が有志で企画した防災教育イベント「だんごむしカフェ」にも参加させていただきました。
以下、それぞれの活動報告になります。
☆全学年同時限での防災授業参観
全学年で同じコマに防災の授業を行っているので、学年ごとの先生方の工夫がとてもよく伝わってきます。
2年生は班に分かれて「通学路で地震が起きたらどうする?」のグループワーク。各班には保護者も入り、「一緒に考える防災」を実践。4年生は「釜石の奇跡」について。海のない長野県、高学年だからこそ考えられる「奇跡」ではない「なぜ助かったか」を考える授業。
そんな中、一年生の授業でのある場面が印象的でした。
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お父さんお母さんの前で嬉しいのか恥ずかしいのか、イスに座っていることも大変な彼ら。2011年3月11日、彼らはまだ0歳、場合によっては生まれてすらいないという事実に驚きを隠せません(もうそんなに経ったのか……といった心境です)。
そんな訳で震災の記憶のない一年生、先生の「それでは今から地震の映像をみます」には思わず「イェーイ」の歓声が上がりました。
すかさずたしなめる先生。一年生でも、一年生だからこそ、一切容赦しません。「そんな風に言う人とは、ビデオを見てもらいたくありません。地震で悲しい気持ちになった人がいっぱいいます。そのことが分かる人だけビデオを見ていいです」。シン……となる教室。「それではビデオを流します」。映像が始まると、時折声をあげながら、子供達は皆真剣に、記憶に無いその"洗礼"を心に刻み込んでいました。
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これからは彼らのような、「3.11を知らない人」がどんどん増えていきます。そんな彼らにも、地震は必ず起きるのだということ、そして、きちんと準備をすることで、誰も悲しい気持ちにならないのだと、伝えていかなければいけないと思いました。
☆大木先生の防災講演「ソナエンジャー!」
授業の後は、保護者の方々に体育館していただき、大木先生による防災の講演です。テーマは「洪水避難」について。
スライドは、「健くん」と「おばあちゃん」が、家にいるシーンから始まります。おばあちゃんは足があまり強くない、というような設定です。
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両親は出かけていて、二人でのお留守番。するとテレビのテロップで「避難準備・高齢者等避難開始情報」の発表が。しかし外はまだ明るく、道行く人は傘も差していません。「まだ避難しなくても大丈夫かな」。そのうち段々と雲行きが怪しくなり、雨も強くなってきました。「だんだん心配になってきた……でも避難勧告はまだ出ていないし、下手に外に出る方が危ないだろう……」。いよいよ雨も風も強くなり雷も鳴り止みません……と、ついに避難勧告のテロップが!。しかし時すでに遅く、おばあちゃんと二人で避難することは既に不可能な状況でした……
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健くんが適切なタイミングで避難できなかったのは何故なのでしょうか?その理由は、彼自身の責任ではありません。彼の心の中に潜み、避難させまいと誘惑する「悪魔」のせいなのです。マンガなどで頭の上にフワフワ浮いている「天使」と「悪魔」、その「悪魔」です。
自分の中にある行動を妨げる理由を、自らと切り離すこうした手法は「外在化」と呼ばれています。もともとは「遺糞症(きちんとトイレで排泄することができない精神的な症状)」の治療に効果を上げていたもので、当人の行動を責めるのではなく、当人と周りの人が協力して課題に立ち向かえるようにするものです。
それを防災に応用しよう、というわけです。大木研では防災の知識で共に悪魔と戦う存在として、天使ではなく「ソナエンジャー」と呼んでいます。
上記の例を、「健くん」「悪魔」「ソナエンジャー」で分けるとこんな感じでしょうか。
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健くん:「あ、避難準備・高齢者等避難開始情報のテロップだ、学校で習ったぞ、避難しなくちゃ!」
悪魔:「しかし健くん、外は明るいし、誰も避難しようとなんかしてないジャン。大げさだ、って笑われチャウゼ。避難勧告が出てからでもいいジャン」
健くん:「うーん、じゃあもう少し様子を見て考えようかな……」
ソナエンジャー:「ちょっと待って健くん!悪魔の誘いに乗っちゃダメだ!避難勧告が出る頃には雨も風もとても強くなっているはずだ。足の悪いおばあちゃんと一緒に避難するには今しかない。命を守るために必要な行動を、誰も笑うことなんてない!」
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正しい防災の知識は、実行する一人一人の背中を押す心強い味方です。
共働きの家庭のちっとも珍しくない昨今、子供が一人でいる時間も少なくありません。そんなとき、もし避難しなければならない状況になれば、自分の判断で決断しなければなりません。しかし、一人一人の心の「ソナエンジャー」と協力し悪魔の誘惑を振り切れることができれば、後手に回るようなことにはならないはずです。
☆「カフェだんごむし」
今回は特別回ということで、看板には「居酒屋だんごむし」の文字が……居酒屋!?
しかし活動はいたって真剣です。
保護者の方々の作った「被災時の料理」を、実際の炊き出しのように列に並んで頂きます。明かり取りにはペットボトルランタンを用いての、避難所の疑似体験をしました。
日持ちのするものを材料に作った料理は、しかし単に栄養を取るためだけのものではなく、美味しく食べられるものばかりです。実際の避難所でも、美味しい食事は人々の心を救う大きな力となります。
参加している親御さん自身が、とても楽しそうにしているのが印象的でした。大木研のメンバーも大いに楽しみました(右は全力で楽しむ大木研小幡氏の様子です)
聞くと、真島小での防災教育が保護者の方に伝わり、「自分たちでも何かできないか」と自然に人が集まったとのこと。義務感や単なる一時のブームには収まることのない、「続いていく防災」を見たように思います。地域の一人一人の間で、防災の意識が「空気」のように漂っているのです。
どんな場所に行っても、そうした空気を感じられるような社会になれば、と願います。
※地元のラジオでも取り上げられたようです。記事もありました。
モーニングワイド・ラジオJ「居酒屋だんごむし開店!?」
http://sbc21.co.jp/blogwp/radioj/page/2
以上、本当に「盛りだくさん」な真島、防災の一日でした。