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防災社会デザイン研究会 慶應SFC

日本安全教育学会で発表しました!


9月23日・24日に岡山大学にて日本安全教育学会が開かれ、「防災教育の教育的価値の考察および実効的防災教育カリキュラムの共同開発~横浜市立白幡小学校をフィールドとして~」の演題名のもと口演発表を行いました。

事前の打ち合わせの様子

〇プロジェクト白幡小  2011年3月11日に発生した東日本大震災を経てもなお、多くの学校の防災教育に十全的改革がみられていない現状を改善することを目指して、2016年度から大木研究会の学部生3名と大学院生1名で横浜市立白幡小学校をフィールドとする調査・研究を行っています。調査・研究にあっては、アクションリサーチの姿勢とエスノグラフィーを軸に据え、積極的に学校へ足を運びながら、子どもたちと先生方の姿を可能な限り詳細に捉えるよう努めてきました。これまでの参与観察により、数多くの知見を得ることができました。安全教育学会での発表は、それらを広く共有するとともに、教育現場の教職員に対して実効的防災教育の重要性を訴えることを目的としています。

〇発表を通して得られた成果

発表の様子

 安全教育学会には、現役の学校の先生が多く参加されるので、私たちが白幡小学校で培った防災教育教材を現場での担い手に直接的に伝達できる貴重な機会となりました。特に来年度は、改定された学習指導要領(10年に一度の大改訂)が実施される要の年であり、防災教育の重点化が決定しています。これまで多くの学校では、形だけで実用性に欠けるの避難訓練や地震や津波のしくみについて学ぶといった「知識インプット型」の授業を少し実施することを防災教育だとされてきました。今回の安全教育学会での口演発表を通して、防災教育の担い手である学校教員に対して直接的に実効的な防災教育を広く提示することができたと思います。

また、今大会が岡山県で開催されたこともとても意義深いことです。防災教育の取り組み状況は地域差が非常に大きく、歴史的に地震や津波の被害を繰り返し受けてきた地域に比べると、岡山県の防災意識は低いと言わざるをえません。これは、岡山県は大きな活断層の存在が指摘されていない唯一の都道府県であることや、南海トラフ震源域から距離のある瀬戸内に面していることが理由として挙げられます。しかしながら、未知の活断層を震源とした直下型の地震が発生する可能性は否定できない他、南海トラフ巨大地震発生時には、岡山県の最大震度は6強、津波高は4mにも達することが想定されていることは紛れもない事実です。実効的な防災教育を防災意識の低い地域に普及させるという意味でも、岡山県の教員が多く集う本年度の学会で口演発表することには大きな意義がありました。

〇今後に向けて  白幡小学校では、2016年度には5年生の児童が、2017年度には4年生の児童が年間を通した防災学習に取り組んでいます。年間を通して防災教育に取り組んだことで、児童がいのちに向き合う姿勢を見せるようになるなどの貴重な結果が数多く得られました。なかでも、従来の避難訓練に置き換わる実効的な避難訓練として開発された「ショート訓練」に取り組む前後での児童の変化は非常に顕著であり、担任のみならず多くの教員の多くがその効果を実感しています。  しかし現状ではまだまだ課題も多いのも事実です。防災の輪の学校全体への広がりは十分とは言えません。口演発表では、学校教員の多くがショート訓練の効果を認識しているにもかかわらず、全校に広がらないという現状に対する疑問声も挙げられたことから、ショート訓練の効果や重要性に関する知見改めて先生方・職員の方々と共有し、白幡小学校に“文化としての防災”を定着させることを目指したいと考えています。


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